入浴についての基本知識

入浴についての基本認識

温泉入浴の心得 温泉に限らず「入浴」は、体にとって強い刺激の1つであり、ある程度危険を伴う行為であるとの認識が必要です。
 特に、高温浴(42℃以上)は体に負担をかけ、強すぎる刺激となる場合があります。


 家庭のお風呂も含めると、日本における1年間の死亡者数は、交通事故でお亡くなりになる方より多いという統計結果もあります。


 しかしながら、ほんの少しの注意で、その事故の大半は防げるとも言われています。


 ご高齢の湯治のお客様の多い肘折温泉では、少しでもこうした温泉入浴による事故を防ぐため、平成元年 国民保養温泉地の指定を受けたことを機に、当時の山形県衛生研究所所長 片桐 進先生(温泉認定医)(後に大蔵村診療所所長 荒川光昭先生(温泉認定医)も加え)のご指導により、「温泉療養相談」が始まりました。


 今では、「スパリエ・インストラクター」という「温泉指南役」の養成も行われており、ここでは「温泉療養」の基本的な事項を紹介していきます。


(以下、両先生のご指導を受け記載ておりますが、間違い等あれば、責任は記載者=当館館主:柿崎雄一にあります)

入浴のからだへの影響

温泉入浴のからだに及ぼす影響

温泉のからだに及ぼす影響は,大別すると、以下の様に分類されます。


◆物理的な作用
 =温熱の作用

  • 温熱により、新陳代謝や血液やリンパ液に循環が良くなり、筋肉や関節を弛緩させ、鎮痛作用も見込まれます。
  • 温泉にはその成分が皮膜を作るため保温効果があり、家庭のお風呂よりは温熱効果が高いと考えられます。
  • 温泉は真水よりも熱さを感じにくい性質があり(成分が皮膜を作るため)、体の芯からゆっくり温める効果もありますが,一方で長湯のための事故を起こす原因ともなりますので、十分な注意が必要です。



 =水圧の作用

  • 浴槽に首までつかると、胸のあたりで1〜2cm、腹部では5cm程度も細くなるほどの水圧がかかります。
  • 水圧により内臓などの血液が押し上げられ、心臓への負担は大きくなりますが、入り方によっては、下半身の血液が胸郭部や心臓に押し戻されることで、心臓が水分(血液)が多すぎると判断するために、利尿作用が高くなり、見かけの水分量(血液量)の減少で、心臓の負担を軽くすることもできるそうです(心不全の治療にも応用されているそうです)。
  • 水圧により横隔膜が押し上げられる効果により、呼吸の換気効率が上がるともいわれており、水圧に対抗しての呼吸は訓練にもなり、呼吸器の治療にも利用されているそうです。





=浮力の作用(粘性の作用)

  • お湯に首までつかると、浮力により体重は1/9〜1/10程度となります。このため手足の関節への負荷が軽減され、入浴(温熱の作用)により痛みが和らぎ筋肉や関節が柔らかくなった状態で、水の抵抗(粘性)に抗しての運動が、リハビリに応用されています。



◆薬理の(化学的な)作用

  • 温泉の成分による効果です。温泉ごと・源泉ごとに違いがあります。
  • この効果については、なかなか証明が難しいそうですが、はっきりとした効果が確認されているものとして、肘折の温泉にも多く含まれている「炭酸ガス(CO2)」の血管拡張作用などがあります。




◆生体的作用(=総合的生体調整作用 、非特異的刺激作用)

  • 温泉療養は、自然がもたらす温泉の転地効果(鬱蒼とした緑の木々、鳥の声、虫の音、湯煙に霞む景色、なんとなく懐かしい硫黄の匂い、目や耳や鼻で温泉地を味わい心と体が開放される等)、自然浴(森林浴のフィトンチット、タラソテラピーでの海辺の気候や海塩粒子、滝や川原でのマイナスイオン)などと、温泉浴の総合的な効果で、不規則な生活で失われた体のリズム(自律神経系など)を安定させ、免疫系・内分泌系を介し自然治癒力を高めると言われています。
  • この効果は、温泉地を訪れることによってしか得られない効果です。曖昧なこの作用こそ「温泉療法」=「湯治ーTouji」の本質と言えるのではないでしょうか?。

温泉入浴の心得

温泉の正しい(安全な)入浴法と注意事項 1



 温泉入浴は、大変気持ちの良いものですが、ムリな入浴は事故を引き起こしてしまう恐れがあります。


 注意を守って、楽しく健康づくりに役立てていただきたいと思います。


<<温泉入浴の心得>>


一、水分補給を忘れずに!
(脳梗塞,心筋梗塞などの予防のために)


*入浴の前後にコップ一杯(以上)の水を飲みましょう。


 発汗や利尿効果により,入浴で体内の水分は失われます。
 特に、強行日程のご旅行後は、脱水状態になっている場合があり、入浴の充分な水分補給が必要です。
 (アルコール類や、コーヒー、ウーロン茶は水分補給になりません)


 体内の水分が失われると、血液の粘性が高くなり(血がドロドロ)、流れにくく詰まり易くなります。
 特に高温浴(42℃以上)では、血小板が活性化されることで血が固まりやすくなると同時に、血栓を溶かす機能(「線溶活性」と言うそうです)が低下し、脱水状態になりやすいことと相まって、脳梗塞や心筋梗塞など重篤な血栓症の危険度が増大すると言われています。




一、酒を飲んだら入らない!


*転倒や溺れなどの事故にあわないように。


 お風呂はぬれている場合が多く、滑りやすくなっています。しかも裸。お酒を飲んで足下がおぼつかない状態で転倒すると大怪我につながることもあります。
 また、入浴中に寝てしまう(意識をなくす)、「のぼせ」てしまうなどで、溺れる可能性が高くなると言われています。1人での入浴は絶対にやめましょう。




一、食後30分は経ってから入浴しましょう!


 入浴すると、血流が良くなり、体全体に血液がまわるため、消化のために胃腸に集まるべき血液が足りなくなり、消化が悪くなります。




一、欲張って何度も入らない!


*初日1〜2回より始め徐々に増やして増やして5回(中高年の方は1日4回にとどめてください)は越えないように。


 温泉入浴を何日か続けるていくと「湯あたり」という症状が現れる場合があります。
 温泉療法は、適度な入浴刺激で本来体が持っている回復力を呼び覚まして疾病の治癒を促すというのが原理ですから、「湯あたり」というからだの変調は、温泉療法が効いてきた事を示す兆候でもありますが、痛み、倦怠感、微熱、食欲不振、眠気、頭重感・頭痛といった症状で、なかなかつらいもののようです。
 その原因は、温泉入浴によって自律神経系が変調をきたすために起こると言われていますが、十分に解明されていないようです。
 一時的に入浴をやめれば回復するものですが、この「湯あたり」を起こさない(軽くする)よう、欲張って何度も入るのはやめましょう。

温泉入浴の例

温泉の正しい(安全な)入浴法と注意事項 2



<<温泉入浴の方法 ー 例>>


一、体をながす
浴槽に病気の元を運ぶのは人間です。


 入浴前に体を洗うのは、単にエチケットというわけではなく、体に付着した大腸菌やレジオネラ菌等の病原体を浴槽に運び込まないようにするためです。
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一、かけ湯(かぶり湯)
右の腰(から下)に5回、左の腰に5回、右の肩(から上)に5回、左の肩に5回、計20回


*事故防止のために高血圧の方は必ず実行してください!


 血圧の急激な変動を抑え、思わぬ事故を防ぐため、入浴する前に「かけ湯」を下半身から上半身へ(心臓の遠い方から)20回ぐらい行い、充分体を温めることによって、入浴の準備をします。
 一般のご家庭でも同程度の「かけ湯」をおすすめしますが、1人20回のかけ湯では浴槽のお湯が無くなってしまいます。20回も「かけ湯」ができるのは温泉ならではですね。
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一、自由入浴
ぬるめのお湯で「半身浴」/「腰湯」がお薦めです。


*肩まで湯に沈めている時間を短く。


 入浴温度は、少しぬるめ(39℃〜41℃)の温浴がお薦めです。
 ぬるめのお湯は、副交感神経を活性化して、からだに鎮静的に作用します。イライラや不眠でお悩みの方は、ぬるめのお湯にゆっくり入ると落ち着きます。
 ヨーロッパでは、37℃〜39℃の微温浴が薦められています。


 逆に、42℃以上の高温浴は、交感神経を活性化させ、からだに興奮的に作用する他、血が固まりやすくなり、血を溶かす効果が低下し、血栓症を起こしやすくなります。
 また高温浴により、脳内麻薬(エンドルフィン)が分泌されるため、限度を超えて入浴してしまうことがあるため、発汗・利尿作用による脱水状態が、ますます血栓症の確率を高めると言われています。
 高血圧や、心臓・循環器系に不安のある方は、特に高温浴は避けましょう。


 入浴時間には、特別な注意はありません。各個人の好みに合わせて、「もうたくさんだ」という気がする前に入浴を終えてください。
 連続してはいるよりも、「5分入って、3分休み、また5分入る」などの「分解浴」の方が温まると言われています。


 半身浴(腰湯)や寝湯は、体(特に心臓)への負担は少ないですが、十分な温熱効果が期待できるため、腰痛や膝などの関節痛にお薦めです。同時に、下半身にだけ水圧をかけることで、利尿効果も促進されます。(水分補給は十分に!)
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一、ひと休み
15分以上は安静に!


*体をゆっくり休めましょう。


 入浴による刺激の疲れをとるため、入浴後は15分以上(できれば30分以上)横になって休みましょう。
 温度にもよりますが、連続20分程の入浴で、250〜300kcalものカロリー消費があるという報告もあるようです。(私の場合、心拍数125;エアロバイク1時間程!の運動に相当します)
運動による熱量は主に筋肉で消費されますが、入浴による熱量は、心臓や肺などの内臓によって消費されます。
内臓は筋肉のように、疲れていることがはっきりわかりません。
このことも、十分な休養が必要な理由だそうです。

= 朝湯はあぶない?!


 心筋梗塞や脳梗塞等の血栓症を中心とした温泉浴による事故は、早朝(4:00〜6:00頃)にもっとも多く起こる言われています。
 早朝は、体が目覚める準備のため、血圧、脈拍、体温などが上昇していく、からだが最も刺激に弱い時間帯だそうです。
 また、睡眠中には水分がとれませんから(寝ながら水は飲めませんよね)、発汗(寝汗)により脱水状態に傾いていますので、この時間帯には血液の粘性も上昇しており、この理由でも血栓ができやすくなっています。
(特に、ご高齢の方は、渇きに鈍感になっている場合も多く、ますます脱水状態になりやすくなっているそうです)
お休み前の水分補給が大切だと言われるのはこのためです)


 旅行の強行日程で脱水状態になり、到着後の飲酒(アルコールの分解)で水分を消費し、血圧も上昇中のこの時間に、入浴の刺激を受ける。
 温泉浴による発汗・利尿効果で脱水状態が進行していき、さらに高温浴の場合、血液が固まり易く溶けにくい状態になっても、気付かないで長湯する。
 危ないですね。


 早朝、起き抜けの朝風呂はやめましょう。(高血圧や、心臓などに不安のある方は特に)
 疲れている到着日の翌朝や、お酒を飲んだ翌朝の入浴は、特に危険です。


朝食後、ちょっと経ってからのご入浴をお薦めしますが・・・、
どうしてもという場合でも、起きてすぐはダメ。
ゆっくりお水やお茶を数杯飲んでから、2人以上でお入りください。

肘折温泉−温泉ドクターアドバイス(温泉療養相談)

温泉療養相談 肘折温泉では肘折いでゆ館に於きまして、6月から10月までの、第1・3日曜日(不定期開催の場合もございます。下記カレンダーでご確認下さい) 14:00から、認定温泉医 荒川先生(大蔵村診療長)による、温泉ドクターアドバイス(温泉療養相談)を行っています。

 温泉の正しい入り方、保養・療養の仕方を、個別にご指導いただけます。

 1回の開催につき約20名様程度の限定ですので、ご予約はフロントまでお申し付けください。
(健康相談ご参加の方は、肘折いでゆ館の入浴料は無料です。)

6月
5日、19日
7月
3日、24日
9月
4日、18日
10月
2日、16日

*尚、お問い合わせは、当館もしくは
  大蔵村産業振興課 温泉健康相談事業担当(TEL 0233-75-2111)まで